指導のつぶやき 動かない理由
お勉強を始めようとしても、なかなかペンを持とうとしません。
また、椅子に座るのもかなりの促しでやっと。
センター初日の学習は、時間半分過ぎた頃に、やっと『はじめます』の文字を手を添えられて一緒に書いたAくん。
目と手の協応がうまくいかず、線の上をなぞることが難しいと感じました。文字は読めるのだが…。
初めての場所で、何を要求されるのかわからないから?
苦手な書字の課題がそこにあるから?
見通し持てるよう、1~5と書いてあるボックスに課題を入れてはいるのですが、いつまでやるのか、時間の見通しが持てないから?…と、
課題に取り組もうとするまで30分近くかかった仮説を立ててみました。
音声発語なく、一見知的に重度に見られがちだが、初見で文字も読め、数も10までの序数概念、量概念があり、しかしながら、視覚認知面での困難さを抱えていると判断しました。
応答の手段は、表出言語ではなく、操作になるので、全身の動き、目の動き、手の操作から動き出そうとしないAくんの気持ちに寄り添うことになります。
2回目の学習からは、見てできると判断した課題には取り組むようになりました(のではないかと、これも所感)。
かなり、スムーズに学習は進んでいました。
ところが、また、動き出そうとしない!なぜ??
そうか!今度は、課題を選択し始めたのでは?
こんな簡単なものはしないと、やりたい課題を訴えているのでは?
課題を選択してもらうようにすると、動き出しました。
選択した方は、視写の課題であったり、細かな見比べの課題であったり…。
彼にとっては難しい方を選んでいました。
5つの課題ボックスの1つには、10までの数の概念があるため、お金の課題を入れています。
金種別に余分数から書かれている数字の数だけ必要数を置けるようになりました。
金種弁別と硬貨の名前も繋がってきました。
そこで、今回は、321の数字を 提示し、余分数を入れた中から、3つの金種と数字を対応させながら、必要数を置くことを課題にしました。
次のバラバラに置かれた中から必要数を置くこともでき、最後は財布の中から取り出すことまで発展しました。
どれもがスムーズに取り組んだ。
彼が今、動かない理由
その理由は同じではありません。進化しているのです。
子どもの力を把握し、ちょっと頑張ればできる課題を設定する。
その時ほどよい支援をしながら、できるに導く指導。
子どもの力をきちんと捉えることから子どもの気持ちに寄り添える。
あたりまえのことを、彼は行動で教えてくれています。